Art of Giclée ジクレープリントへのこだわり

1. ジクレーとは

「ジクレー(Giclée)」はフランス語で「噴射する」を意味する言葉に由来します。微細なノズルから顔料インクを霧状に噴射し、紙の表面に色彩を重ねていくこの技法は、1980年代にアメリカで生まれました。

これは単なる「高品質な印刷」ではありません。職人がカメラでシャッターを切るように、一枚一枚の出力に向き合い、色彩の再現性と紙の特性を見極めながら仕上げてくる。それは、まさに制作行為のひとつです。

2. 美術品として認められる理由

絵画や版画がコレクターに愛される大きな理由は、作品が「時間に耐える」ことにあります。ジクレープリントが美術品として認められるのも、同じ理由からです。

使用される顔料インクは、紫外線や湿気への耐性が高く、適切な保管環境のもとでは数十年から100年以上にわたり色彩の劣化を抑えることが可能とされています。これは「アーカイバル品質」と呼ばれる、長期保存に適した基準です。

また、ジクレーの最大の特長は色彩再現の精度にあります。原画が持つ微妙な色の階調、光の当たり方による質感の変化、水彩特有の滲みや透明感——これらを忠実に再現できる技法は、現代においてジクレー以外にほとんど存在しません。

3. 一般的な印刷との違い

書籍や雑誌に使われる一般的な「オフセット印刷」は、4色のインクを掛け合わせて表現する大量印刷に適した効率的な技法ですが、原画の微細な階調を完全に再現するには構造上の限界があります。

家庭用インクジェットプリンターも原理は似ていますが、使用されるインクの顔料濃度・耐光性・紙との相性において、美術品制作用の機器とは大きな差があります。

ジクレーは、人間の目が認識できる色域を最大限にカバーする多色の顔料インクを使用します。この広い色再現範囲こそが、原画を前にしたときの感動をそのままに届けることを可能にしています。

4. FRAGR•ART BOTANICAのお約束

宮澤香代子の作品は、自社での制作と信頼できる専門業者への発注、双方の体制でお届けしています。いずれの場合も、作家自身の監修のもと、原画の色彩と質感を最大限に再現することを最優先に、一点ずつ丁寧に仕上げています。

大量生産とは対極にある、作家の意図を損なわないための選択です。100年後の未来まで続く色彩の物語を、どうぞお手元でお愉しみください。